定着率の計算方法やエクセルの作成方法。まずは自社の状況把握が大切
定着率は、採用した従業員がどれだけの割合で離職せずに働き続けているのかを示す数値です。
自社の人事に悩みを持っていて、
「実際にどのくらいの定着率があるのか?」
「どのように計算をすればいいのか?」
など、知りたい方も多いのではないでしょうか。
定着率は離職率とともに企業の働きやすさを測るバロメーターとして注目されています。
そこで、今回は定着率計算方法と重要性について解説していきます。
自社の定着率を把握することが重要
会社の組織を強化して、成果に結びつけていくためには人材の育成が欠かせません。
そのため、どの企業でも採用活動や社員教育・社内研修には相応のコストをかけています。
優秀な人材を確保し、少しでも長く働いてもらいたいというのが人事の本音ですよね。
そうやって採用した社員が短期間で辞めてしまっては、教育や研修に投じたコストも無駄になってしまいます。
現在、就職活動を行う学生は、企業の定着率や離職率のデータを参考にして就職先を選んでいます。
企業の離職率は業種によって大きな差があり、離職率が特に高いのは証券会社や小売業の他、宿泊業や飲食業も含めたサービス業です。
そういった業界では、新卒採用の3年以内離職率が50%を上回る企業の例も少なくありません。
離職率が低く定着率が高い業種としては、電気・ガス・水道などのインフラ関係や電気機器業界、製薬業界などです。
技術力や仕事の熟練度を、長期間にわたって育成していくような業種ほど離職率が低い傾向があります。
企業が経営課題を発見するためには、同じ業界内で自分の会社の離職率がどのレベルなのかを把握する必要があります。
国内産業全体のなかでは離職率が低くても、業界内では定着率が決して高くなかったとい例も少なくありません。
「定着率」の考え方
企業の定着率とは、その企業に採用された従業員のうちどれくらいの割合が退職せずに残っているかを示す数値です。
ある企業が会社設立された時点で、在籍していた従業員が現在までに1人も退職せず働き続けていれば、この会社の定着率は100%ということになります。
実際は、定年退職する社員や中途で退職する社員が出てくるので、実効性のある定着率を算出するには一定期間を区切って計算する必要があります。
よく利用されているのは新卒社員の3年定着率で、新卒で一括採用された日から3年後に在籍している社員の割合を示します。
この数字は算出期間によって変動し、例えば1年後の定着率が90%でも3年後には50%にまで下がるという場合があり得ます。
定着率と離職率は混同されがちですが、一定期間の離職率が判明すれば定着率も自動的に算出されるような対の関係にあります。
どちらも%で表記されるのが一般的で、定着率と離職率を足せば100%になります。
厚生労働省は雇用動向調査を毎年発表していますが、令和3度の調査では離職率が13.9%でした。つまり令和3年度の1年間で定着率は86.1%という計算になります。
(参照:厚生労働省)
定着率の計算方法
期間を指定して離職率を求めるには、対象期間の開始時点における従業員数のデータが必要です。
対象期間内に退職した人の数を集計し、期間開始時点の従業員数で割った数字に100をかければ離職率が計算できます。
離職率と定着率は対の関係にあり、離職率が判明すれば定着率も自動的に決まる仕組みです。
最初から定着率を計算する場合は、対象とする期間の開始時点で雇用した従業員数のデータが必要です。
これに加えて対象とする従業員のなかから指定期間内に退職した人数のデータも欠かせません。
〈ある年に新卒採用した社員の3年後定着率を計算する場合〉
対象とする社員のなかで、入社後の3年間に退職した人数を算出します。
初年度に採用した人数から、3年間で退職した人数を引けば、3年後に定着している社員の数が出ます。
この人数を3年前の採用人数で割って100をかけた数字が、3年後定着率となります。
同様の計算式を使えば1年後の定着率や2年後の定着率も知ることができます。
自動計算できるエクセルの作成方法
多くの企業は、毎年4月に新卒者を一括採用します。
そのため、入社日が同じになる新卒採用の社員は一定期間内の定着率も比較的容易に計算できます。
しかし、企業によっては新卒採用よりも中途採用の割合が高い例も珍しくないため、そうした企業では新卒社員の定着率だけでは労働環境の状況を把握できません。
中途採用の従業員やパートタイマー・アルバイトは入社日がひとりひとり異なるため、定着率の計算も複雑になります。
一括採用される新卒社員が途中で退職した場合でも、退社する日が異なります。
入社日や退社日が異なる従業員の定着率を計算することは容易ではありません。
そんなときに便利なツールとして、表計算ソフトがあります。
表計算ソフトのエクセルを利用すれば、複雑な式も自動計算してくれます。
エクセルの表に従業員名と入社日・退社日という3つのデータを入力するのは手作業となりますが、IF式やDATEDIF、COUNTIFSといった関数を上手に使うことで定着率を自動計算できるようになります。
在職中の従業員は退社日欄を空欄とし、在職状況を0または1で区別するセルを作成します。
中途退職した人には、入社日と退社日のデータから勤続年数が自動計算される関数を使います。
在籍中の従業員は、現在の日付から勤続年数を出す関数が必要です。
在籍状況によって異なる2種類のデータを分岐させる関数によって勤続年数欄を埋め、集計したい定着率の期間を設定します。
設定した期間に基づく最低値と最高値を勤続年数に関連付け、最後に在籍状況を示すセルを参照すれば指定期間中に定着した人数が自動計算できるのです。
数値を把握し、対策を考えよう
離職率や定着率は期間の設定方法によって数字が大きく変動するため、分母と分子をどのように設定するかによって得られる指標が違ってきます。
業種によって1年以内の離職率が重視される企業もあれば、もっと長期的な視点に立脚して3年後や5年後の定着率が知りたいという企業もあります。
人材の入れ替わりが激しい業界では短期間の離職率を算出した方が、労働環境を改善していくための指針も得やすくなります。
5年や10年といった長期のスパンでじっくりと人材を育成していく業種では、3年以上の期間にわたる定着率を出して数値を改善していく努力が求められます。
このように、定着率や離職率を数値の形で正確に把握していれば、自社に内在する問題点がはっきりします。
そういった経営課題を解決する手段として、労働環境の整備や従業員のモチベーション維持に取り組んでいる企業も少なくありません。
まとめ
この記事では、従業員の定着率を算出する方法や、計算ソフトについてご紹介しました。
離職率の改善と、定着率の向上に取り組む企業には優秀な人材が集まる傾向があります。
その理由は、定期的に定着率や離職率を数値化し、課題の早期発見を行っているからでしょう。
従業員の定着率や、離職率の推移を事業年度ごとに分析していくことで業績改善につながるヒントが得られるでしょう。