外国人人材の雇用と未来
外国人人材の雇用は年々増加し200万人(※)を突破しました。しかし、日本人が考える「働く理由」と実際の理由には齟齬があるのではないでしょうか?
外国人人材が日本で働きたい本当の理由はもうお金ではありません。この背景を理解することこそが、外国人人材の雇用を成功につなげる第一歩ではないかと考えています。
日本語を話し日本の文化に馴染もうとする彼彼女らは、若者離れなど多くの課題を抱える日本企業にとって、課題解決の一助になるはずです。
※出展元:2024年1月「外国人雇用状況の届出状況のまとめ」
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現代の外国人人材雇用の現状
2024年1月に厚生労働省から発表された「外国人雇用状況の届出状況のまとめ」によると、2023年10月末時点の外国人労働者は、届出が義務化された2007年(平成19年)以降、過去最高の200万人を突破しました。なぜこれほどに外国人雇用が増え続けているのでしょうか?
1980年代、日本はバブル景気により人材不足が深刻化し、人材を確保するために外国人人材を積極的に受け入れる動きが広がりました。当時の日本で働く彼彼女らは「出稼ぎ」というイメージがあったと思います。しかし、現代の外国人人材の雇用は以前とは少し違った要素で増加しています。
それは、日本の少子高齢化による人手不足が挙げられます。
「なんだ、結局人手不足ではないか」と思った方もいるでしょう。しかし、言葉は同じでも根底にある状況は変化しています。現代の日本において、少子化における人材不足、社員の高齢化は大きな課題となっています。新しく人を雇いたいと考え採用情報を出しても雇うべき人材が来ない。そんな今、外国人人材は人手不足を補うのはもちろん、海外からのインバウンド客への対応、グローバル化、ダイバーシティが謳われる現代で重要な役割を担っているのです。
少子高齢化による人材不足という根本的な課題を解消するために、政府による支援も手厚く、さまざまな助成金や補助金が用意され、日本で働きたい外国人人材に向けても積極的な支援が行われています。
不寛容な日本社会と労働環境
しかし、実際には「人手不足により外国人人材を受け入れたい」という割に、実際に外国人人材を受け入れるとなると社会も企業の労働環境もまだまだ不寛容という現実もあります。
過去の経験から「出稼ぎ」という印象を拭えない日本人も多く、また日本語の難しさもあってか、外国人人材を見下すような行為や、コミュニケーションを諦めてしまうということも多く見受けられ、いまだに“いじめ”などがニュースになることもあります。
首都圏は若干違うかもしれませんが、他の都市圏(例えば大阪などでも)では、高学歴で何カ国語も扱える様な外国人人材であっても、サービス業などの職種に限定されてしまう…ということがまだまだ多くあるそうです。
外国人人材を雇用するメリット
近年、外国人人材の雇用は大きな役割を持っています。人材不足を補うだけでないメリットこそが、現代と過去の大きな違いといえるのではないでしょうか。
・日本人の思考にとらわれない新たな視点
海外から来日する外国人人材は、日本とはまた違った多様な文化の中で育ってきました。それ故に、日本人の思考にとらわれない自由な発想を持ち、新たな視点からアイデアが生まれる事もあるでしょう。日本が誇る質の良い製品やサービス、またおもてなしの心と相乗効果を生むことができれば大きな変革が期待できるのではないでしょうか。
・グローバル化への対応
昨今、海外進出や事業拡大を見据えて優秀な外国人人材を確保しようとする日本企業は増加傾向にあります。多言語化への対応はもちろん、海外進出の際に海外企業とのコミュニケーションが円滑に行えるなど、多言語を扱える人材がいること自体がメリットになります。
筆者の知人に地方都市で染物店の店主をしている方がいます。古く小さな染物店ですが、外国人人材の採用がグローバル展開のきっかけとなり、今では海外のブランドとのコラボレーション企画など、多くの依頼があるそうです。彼は「たった1人の外国人人材の雇用が、これほどまでに大きな変革をもたらす事は誰にも想像できなかった」と語ってくれました。
日本で働きたい外国人人材に起きている変化
まだ景気が良く円高だった時代、外国人人材の多くは出稼ぎが目的だった方もいたでしょう。しかし景気の良い国が増え、さらに円安も続くなか、優秀な外国人人材は各国間で取り合いになっており、その中で日本は買い負けているというのが現状です。
それでも「日本で働きたい」という外国人人材が日本で働く目的には変化が起きています。
・日本の文化に興味を持っている。
神社仏閣など日本の歴史的な文化財に興味がある、アニメなどのサブカルチャーや日本食が好きなど、様々な日本の文化に魅入られ、その中で生活したいという外国人は非常に多く、その興味をきっかけに日本で働くことを選択する方も多くいらっしゃいます。
・日本特有の技術やスキルを身に着けたい
日本特有の技術は多くあります。例えば新幹線やスカイツリーなどでも利用されている日本製の部品は日本だけでなく世界各国で利用されていますし、ITやテクノロジーにおける分野でも繊細かつ革新的な技術を生み出してきました。食文化における技術などもそのひとつで、寿司職人など日本特有の食文化は海外でも多く需要があり、その技術を日本で学び母国に帰って独立したい外国人人材も多くいらっしゃいます。
銀座に店を構えるある高級鮨店では、「日本の若者は修行に耐えられない、外国人人材はゆくゆく母国で鮨店を開こうという気概があるので熱心で真面目、もう弟子は外国人しか雇わない」と言っていました。
・日本の安全・安心な生活
昨年には、米国NY郊外のガソリンスタンドの月給が日本円にして2000万円というニュースがありました。しかし、景気が良くて給与が良くても安全・安心にコストがかかる国も多くあります。その様な理由も日本を選ぶきっかけになっています。
日本で働きたいと考える外国人人材の多くは、私たちの気づかない日本の魅力を見出していて、また技術やその背景にある文化・歴史を学びたいという人も多く、以前のように「ただ働ければいい」のではなく、日本の文化の中で日本人と同じように働きたいと考えている場合も少なくないのです。
このような彼彼女らの想いを知り理解することで、雇用する私たちも変化し多様性を受け入れていくことが重要なのではないでしょうか。
これからの外国人人材の雇用
日本では少なくともこれから数年間、外国人人材の雇用は確実に増加すると考えられています。彼彼女らの中には高い教育を受け多言語を扱える方たちも多くいます。外国人人材の中には単なる「安い労働力」ではなく、自らの意思で「日本で働く」ことを選んだ人たちがいるのです。実際に企業が本人に支払う給与は年々増加傾向にあり、これは日本以外の国でも起こっています。例えば韓国では日本と同様に少子化が進んでおり、優秀な外国人人材を採用するべく国籍法を改正するなどの対策を行うほど外国人人材を求めています。私達日本はそのような人材獲得の競争の最中にいるのです。
前述の通り、外国人人材は以前のような「労働力だけ」ではありません。もちろん「とにかく働きたい」という外国人人材もゼロではないかもしれません。しかし、「ただ働いてくれたらいい」という思考で採用を行っても期待した結果が出ない・出せない、定着にもつながらないなど、働く側、採用する側の双方に対してメリットにならないのではないでしょうか。
日本が好き、日本で働きたい、日本の文化を知りたいと感じてくれる外国人人材を採用することは、日本企業の未来を切り開くきっかけになるのではないかと私達は考えています。
日本の文化に興味はあるが知識があるわけではない
いくら日本が好きで、日本で働きたい外国人人材と言ってもいきなり日本の文化を身につけられるわけではありません。
私達も日本に生まれ、日本で育ったからこそ身についたものがあります。そしてそれらは、来日して数日、数週間で身につくものでもありません。
Helteでは、ただ働きたい外国人人材を斡旋するのではなく、就業者と雇用主が信頼できる関係性を構築出来る環境を提供する事を目指しています。
当社の代表後藤は、自身の経験から「年齢も環境も違う人と話す事には特別な価値がある」と感じ、単なる語学学習ではなく、文化も含めて伝えていく事を考えました。
文化や背景が違っても「日本が好きだ」という思いは共通しています。Helteでは日本の文化と日本語を軸にして多様な価値観を持つ人をツナグ事が出来るのではないかと考えています。
少子化含め多くの課題を抱えるこれからの日本では、外国人人材の雇用は否応なしに今後も増えていくでしょう。そんな中で「日本が好き」という共通の想いがある人たちを採用することで、継続的かつ安定的な関係性を築く事が出来るのではないでしょうか。そしてその関係性が新たな一歩を踏み出すきっかけを作る事につながると私達は考えています。
著者:株式会社Helte 後藤 学代表
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