ネックは採用ではない。「早期離職」が引き起こす企業の問題とは
雇った社員が早期離職をすることは、部下の面倒を見る管理者にとって早く改善しておきたいポイントです。
適切な人数より少ないまま業務を遂行することは、従業員のストレスとなり、さらなる離職者を出してしまう可能性もあります。
今回は、早期離職によって企業にどのような問題が起こるのか解説していきます。
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早期離職が多くの企業で問題になる
早期離職は一部の企業だけではなく、日本のさまざまな業界で問題になっています。多くの企業で発生しており、これまで伝統的に行われてきた採用方法や教育制度を見直す動きが高まっているのが現状です。
特に宿泊業や飲食サービス業は、お客様を中心に動かざるを得ず、結果として残業が増えたり、ストレスが増えたりと、離職率が高い業界です。
生活関連のサービス業と教育業についても同様で、入れ替わりがよくあることから早期離職が問題視されています。
その他、即戦力の中途採用でも早期離職の問題が発生しており、利益をだせる人材を定着させられる社内環境の有無といった大きな問題にまで発展しています。
現在は、真剣に従業員の待遇を考えることで、離職率が高い業種でありながら、平均より早期離職を抑えている企業もでてきました。
早期離職によって、本来であれば定着率が高い業界にも関わらず、社員の年齢が偏り、深刻な人手不足に陥ってきたことが背景にあります。
企業のトップが危機感を強めて、トップダウンで全社的に改革できるのかどうかで、今後の成長や生き残りが決まるでしょう。
「採用」だけに注力する時代は終わった?
かつては、代わりならいくらでもいるという強気のスタンスで、辞めたら求人をだして、また雇えば良いという考えを持つ企業が多くありました。
しかし、作れば作るほど売れていた高度経済成長期とは異なり、もはや無駄のない経営で狙った相手に魅力的な商品やサービスを売る時代です。
徹底して無駄を省くことが、同業他社に差をつけるポイントで、新人の教育に時間を取られていては、本来の業務が遅れてしまうデメリットもあります。
管理者の視点では、早期離職による他の社員のモチベーションの低下や、アイディアの枯渇による売上不振も無視できない問題です。
企業側は離職しにくい人材を採用しつつ、その企業で働くことが楽しくて、待遇が良いといった実利的なメリットを提示することが大切です。早期離職に繋がる要因を1つずつ潰していくことで、離職を考えない環境を作っていきます。
採用によって、頭数だけ揃えれば良い時代は過去のものであり、働く社員にとって納得できる職場に改善することが要求されています。
採用にかかるコストはかなりの金額なので、早期離職を減らすだけでも毎年の費用を大きく削減できることでしょう。新たな人材の採用は、人事担当者から役員まで色々な社員が関わるので、コストに見合う成果をだすために、採用後の教育と配属まで、具体的に見据えた採用をしなければなりません。
早期離職増加が与える企業への影響
早期離職の増加が企業に与える影響は想像以上に大きい傾向があります。
いかに、早期離職を防ぐことが大事かを知るためにも、いくつか解説していきます。
採用コストが無駄になる
新卒の採用には、色々なコストがかかっています。
卒業予定の学生に向けたホームページの修正、求人サイトへの広告掲載、問い合わせへの応対、さらに会社説明会などの具体的な選考でも複数の社員が担当するのが一般的です。
1人につき平均50万円かかっている採用コストが、そのまま失われてしまう早期離職を放っておくと、人が辞める度にどんどん企業の収益が悪化していきます。
管理者の立場での早期離職の予防は、企業の無駄な出費をストレートに減らすことでもあるのです。
宣伝広告や大手の求人サイトとの連携は必要不可欠なので、採用コストをかけた甲斐があったと思える人材を選び、なおかつ、長く働いて貢献してもらうことが目指すべき形になります。
また、減った人員を補充しないと、残った社員に負担が集中して、早期離職の増加に繋がってしまうので注意しましょう。
教育コストが無駄になる
社員の教育は、基本的に上司や先輩が自分の時間を割いて行います。早期離職者を出してしまえば、教育している新人のみならず、教育にあたる人材のリソースが全て無駄になってしまいます。
社内にある、有形無形の資源の損失は早期離職における目立ちにくい問題ですが、企業の受けるダメージとして考えておかなければいけない項目といえます。
管理者が、自分で抱え込んでしまいがちな領域ではあるものの、企業の将来のために部署の垣根を超えて共有しておきたい大事な情報です。
早期離職によって、無駄になる教育コストが、いかに膨大であるのかを正確に理解することから、社内の改革がスタートします。
企業の信用問題に関わる
企業は、他社や消費者と良好な関係を築くことで、他では提供できない独自のブランドを作り上げます。
しかし、早期離職によって、次々に担当者が入れ替わる状態では、長期的な目線に立った行動がとれず、目の前の業務を片付けることのみで燃え尽きてしまうのです。
早期離職増加により、長年に渡って獲得してきた大事なクライアントを失ってしまう恐れがあります。
お客様と接する部署ではない管理者にはわかりにくい話ですが、企業として利益をだせなくなったら将来的にはリストラだけではなく、倒産してしまう可能性もあります。
業務に慣れている中途採用の人間ですら、新しく入った企業に馴染むには、半年ほどかかるので、早期離職は取引先との関係の悪化に繋がりやすい傾向があります。
既に働いている社員にも影響がでる
早期離職増加は、社内で働いている社員に深刻な影響を与えます。
周囲が頑張っているから辛くても耐えている心境の社員は多く、そのなかで雇ったばかりの新人や業務の中核になってくれると期待している即戦力の人材がすぐに辞めてしまうと、モチベーションが低下するケースが大半です。
業務の負担が増加することがモラルの低下にも繋がり、改善への行動や他の社員との協力体制が崩れていきます。
メンバーシップによって成り立っている企業で、内部の連携が悪くなることは、早期離職が及ぼす大きなダメージのひとつです。
企業の上層部が、全力を挙げて対策に取り組まない限り、人がいないことで大変になっていく悪循環によって、他の社員へストレスを増加させる要員となります。
秘密情報が世間に知られる可能性がある
企業に雇われている間は、守秘義務を守る意味でも職場の実態を外部に話すことを避けるのが普通です。
しかし、辞めた企業についてはもう無関係であることから匿名の掲示板やブログで内情を暴露する人がよく見られます。
家族や親戚、友人に率直に話すことでも、噂が広まって企業のイメージが悪化する可能性があります。
早期離職をした人間は、企業の悪い面の情報を発信するケースが目立ち、特に転職の口コミを掲載しているWebサイトは、企業の人事部が手をだせない空間です。
内部の事情をよく知っている新人に愛想を尽かされないように気を配ることも経営的な課題になりました。
社員を軽く扱っている企業と思われてしまうと、求める人材からの応募がなくなってしまうので要注意です。
まとめ
早期離職率が増加すると、企業に多大な影響を与えてしまうことがあります。なかには、中小企業であれば致命的となる問題もあるのではないでしょうか。
早期離職率の増加による問題を防ぐためにも、企業の体制を一度見直してみてはいかかでしょうか。